国立新美術館『安藤忠雄展』で感じた安藤忠雄の信奉心




現在、国立新美術館で開催中の『安藤忠雄展 〜挑戦〜』に行ってきました。

恥ずかしながら展示に行くにもかかわらず、僕は安藤忠雄に関する事前知識がほぼありませんでした。
「コンクリートを使ったモダニズム建築の流れの人だろう」くらいにしか思っていませんでした。

しかし実際に行ってみると、

「しんど…」

と思わず呟いてしまうような内容だったのです。
一言で言えば、タイトルにあるように圧倒的な「信奉心」の人だったのです。

それが一体どういうことか。このことについて今日は話ししていきます。

展示情報

国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展―挑戦―
会期:2017年9月27日(水)〜12月18日(月)
休館日:毎週火曜日
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
※金・土曜日は20:00まで
会場:国立新美術館 企画展示室 1E+屋外展示場
住所:東京都港区六本木7-22-2

9/28(木)の10:00から行きましたが、予想以上に人が来ていました。
混み具合はちょうどギリギリの混雑。
これ以上人が増えるとじっくり見ることが難しくなるだろうな、というぐらいです。
中国か韓国の団体客も来ていたりしました。
休日になるともっと人が増えると思うので、会期の中盤か平日を狙って行くのがいいと思います。

使用されてる会場は、昨年の『ISSEY MIYAKE展』のちょうど真下の場所。
1階の大きなフロアです。

宣伝などで大きく出ていますが、『光の教会』の再現インスタレーションもあります。
展示を見て行く中で、途中で外に出るスペースがあり、そこで見ることができます。

行って見てどうだったのか

最初に上げた写真は、今回注目の的でもある『光の教会』の再現インスタレーションです。
屋外に再現とはいえ、実寸大の建築インスタレーションを作るということはそうあることではないはずです。

そういう意味で貴重なインスタレーションだった気がします。

全体としても、ちゃんとフォーカスのあった良さげな展示に思えました。
フォーカスが合っているという点に関していえば、『ISSEY MIYAKE展』と同様の匂いがしました。

ただ、今回の展示会を見て感じたものはとてつもない「信奉心」でした。
それがひたすらに感じられたせいで、『ISSEY MIYAKE展』のような心踊るだけでは済まない事態に僕は陥ってしまいました。

展示を見始めた時

見始めた時は、もっと純粋に、「建築」というものについて考えながら、とにかく技術ベースで昔の人々の視座というものを観察し、批判的に見ました。

自分の今の研究テーマの分野の1つは「Computer Graphics」です。
この分野は非常に建築と近しい関係にあります。
どこの設計事務所でも、デザイン事務所でも、建築物のモデルを作成して外観や内装のシミュレーションをします。
そこで出力される(レンダリングされる)結果というのは全てComputer Graphicsに基づいているのです。

だから、「コンクリートを使ったモダニズム建築」という文脈に対し、「もっとちゃんと技術ベースに見るべきだろ!」とやや怒りを覚えていました。

断面図を見れば、「なぜこんな図形から人が想像しなければならないのか。機械のためのフォーマットに人間がなぜすりよるのか」とか
スケッチ図を見れば、「CADのない時代はやっぱ今よりダントツにポエティックだったんだな。これは幾何学ではなく、絵画的手法を通した世界の見方だな」とか

(ここで語っている建築に関する論は、以下の記事で掘り下げています)

しかし、『光の教会』を見終え最後の大展示ルームに入り、いくつかの建築物を見ているうちに自分の見方が間違っていたことに気づき始めます。

僕は安藤忠雄を「モダニズム建築の流れにいて、技術と既存の融合を目指した建築家」として捉えていたのですが、これは違うのです。

安藤忠雄はおそらく自身の中に強くある「美」に関する価値観や「大いなるもの(自然)」といったものをとことん「信奉」し尽くしている人なのです。

なぜ「信奉心」の人だと思ったのか

そう思ったのは、別に教会建築が数多く展示されていたからというわけではありません。
いや、確かに教会建築を色々見るうちに「信奉心」の人だという仮説に行き着いたのは事実ですが、安藤忠雄が手がける教会建築の宗教は1つに絞られません
キリスト教から仏教まで。

そうなると、安藤忠雄自身がどこか一つの宗教に身をやつしている様子は想像できません。

ただ、教会建築以外の建築物を含めても、とことん一貫性のある「美」への執着が見られます。

安藤忠雄の扱うコンクリートは「静謐」であり「美しい」のです。

それが全てに対して一貫されています。

印象的な建造物の一つが、上記リンクにも載せた「ブッダ自体とそれを囲う建築物」です。
施工の様子がタイムラプスで撮影されて上映されていましたが、手の込みようは尋常ではありません。

なぜあそこまでできるのでしょうか

ボクシングをやっていたような体育会の人間だからでしょうか

「いいや、違う」と僕ははっきり断言できます。

あそこまでできるのは、本当に圧倒的に「信奉」をしているからです。それ以外考えられません。

一つのことに執着し、それを生涯続けるというのは生易しいものではありません。
世俗的ではない何かが絶対に必要であるはずなのです。

どんな人にオススメ?

今回の展示の圧力は、正直Ars Electronicaをも凌ぐものがありました。
それはひとえに、安藤忠雄の信奉心が凝縮された空間になっていたからに他なりません。

もちろん、『光の教会』のインスタレーションも綺麗だし、安藤忠雄の建築全体の「美しさ」を見るために行くのも良いと思います。
作り手の何かを感じるというより、アウトプットにフォーカスするならそれほど精神的圧迫は感じないでしょう。

ただ、作り手目線を持って、安藤忠雄その人を作品を通して見る気概のある人は多少腹を括って行くといいと思います。

良くも悪くも、心への重圧感をもたらす意義のある展示会でした。




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