Leica Life #06 「なぜライカの色はライカの色なのか 〜モノクロからカラーまで〜」




僕がLeicaを手にしてから最初に使ったレンズはCarl Zeiss Planar 50mm/f2.0だった.
そのレンズはきちんとシーンを写し取ってくれて,後から色付きを青みがけてベタつきのある,しっとりした色味で現像していた.

しかし,Summaron 35mm/f3.5を手に入れて撮影を始めてから,ホワイトバランス調整で青に持っていくことが本当に減った.
青に持っていくと青くなってしまいすぎるのだ.

(青くしすぎた写真を載せる)

これは本当に不思議な体験だった.
もはや現像で僕がいじれる範囲がほとんどなくなってしまったような感覚だった.

そんな折,これもまた奇妙な経験をした.
SONY α7s2にフォクトレンダーのレンズを普段つけている友人とレンズを交換して遊んでいた時のことだった.
SONY α7s2にSummaronをつけて撮影したデータを取り込んだ時,「収差が結構激しいな」とその友人が言ったのだった.

これは僕にとっておかしな話だった.
僕はZeissからSummaronに変えたことでむしろ収差の悩みから解放されていたのだ.

Zeiss時代,度々現れるパープルフリンジには本当に苦しめられた.
少しでも飛びすぎている箇所が画面内にあるとパープルフリンジが発生し,さらにその画像が圧縮されて表示された日には目も当てられない.

(フリンジの写真)

その悩みがSummaronユーザーになってからは格段に減っていたのである.

これら幾つかの不思議な経験から,僕はLeicaの色について一度考えてみようと思った.

昔調べたLeicaセンサーの分光感度特性の話

「Leica Life #02の後編」で実は語ろうとしていた分光感度特性の話がまず必須である.
これはLeicaを買う以前,「Leica M9(M8)の色味が大好きだ.しかしそれがなぜかはっきり分かるまでLeicaを購入するわけにはいかない」という自制の心から調べた時の賜物である.

Leica M9はデジタルLeica機の最後のCCDセンサー搭載機であり,それは今はその面影のなきKodak社によって提供されたものであった.
Leica M9の一世代前のM8もまたKodak CCDが搭載されているのだが,一部では「M8のカラーはシーンに対する当たり外れが激しめ」というのがもっぱらの評判であった.
そんな2つのLeica CCD搭載機のセンサーの分光感度特性が以下の通りである.
(Kodak社のサイトより)

Leica M8

Leica M9

一方,例えばSONYのセンサーはこんな感じである.

一目瞭然,Leicaのセンサーは赤の感度特性が著しく低いのである.
これは随分珍しいことに思えた.

「Kodakブルー」という言葉が界隈では実は有名らしく,Kodak社のセンサーが載っているカメラというのが世の中には他にもある.
Leica M8,M9の製造年月を考慮しながら,近辺の時期のセンサーを探っていくと,どうやらOlympusのカメラにKodak CCDが搭載されているらしいという話がわかった.
しかしながら,これらOlympusに搭載されているセンサーの分光感度はLeicaのそれには及ばない程度にニュートラルなものであった.

こうした調査から僕は,Leica M8,M9のセンサーは本当に特別な逸品なのだ,という確信を持ち,購入に至ったわけである.

レンズの色収差との組み合わせで考える

さて,このセンサー感度の事実から考え出される1つの仮説について説明を進めていこう.

LeicaのオールドレンズをLeica以外のカメラに使って収差(フリンジなど)が発生するという話は,SONYに限ったことではなく,世の中でよく言われていることのようだった.

以下の記事は,BlackmagicにSummicronをつけて撮影したら収差が出たという検証記事である.

Chromatic aberration: hard edges, hue shifts, and storytelling

Blackmagicのセンサー感度を調べるのは面倒なので割愛するが,Leicaのようなセンサーでないことは容易に想像される.

ここでの疑問は1つに集約される.

「なぜLeica以外のセンサーにLeicaのオールドレンズを取り付けると赤み系の収差が発生しているのか?」

「この原因は,上述したようなセンサー感度特性のせいなのではないだろうか」というのが僕の仮説である.

そして,そこからもう1つの疑問が新たに生まれてくる.

「なぜLeicaデジタル機はこのようなセンサー感度にしたのか?」

その答えはモノクロフィルム時代にある,と僕は考える.

ライカが全盛期に突入していく時代は,モノクロフィルムで撮影する時代である.
ライカのレンズが素晴らしい,というのがその界隈の厳然たる事実であり,そのレンズはモノクロフィルムとの組み合わせの中で最大限に魅力を発揮するように設計されているはずである.

モノクロフィルムの感度特性を一概にまとめることはできない.
例えば,こんなものもあるし,

全くもって平坦なものもある.

web上で,いくつかの記事をさらいながら超有名な写真家「アンリ・カルティエ・ブレッソン」や「ファン・ホー」がどんなフィルムを使っていたのかを調べてみると,こんな話が出てきた.

これらのKodakフィルムの分光感度特性は公開情報から以下のようなものだというのが分かる.

(スクショ)

もちろん彼ら2人の写真にしたって,現像でコントラスト調整などが行われているので,単純に感度特性だけで片付けることはできない.
しかし,確かにブレッソンは暗部が線形的(なめらか・持ち上がり気味)だし,ファン・ホーはコントラストきつめで暗部のグラデーションが素晴らしい,という印象に一致する部分はあると思われる.

ただ「ライカのモノクロ」のイメージの持つ分光感度特性というのは,最初にあげたこれに近いのではないだろうか.
そう考えると,その中でレンズ設計はされているわけで.

そうしたレンズの良さが最大限残るようなセンサー設計をするなら,そしてモノクロのライカ特性をそのまま引き継ぐようにするのであれば,確かにライカのCCD機の特性の意味がわかるのではないだろうか.

まとめ

今回述べたのは,1つの僕なりの仮説に過ぎない.
それを検証するには,レンズに波長ごとのレーザーでもぶち込みながら収差を確かめてみたり,色々光学的実験をしてみる必要があるだろう.

それに今後,色々なレンズを使っていく中で自分の意見も変わっていくかもしれない.

とはいえ,1つここまで書いてわかったのは,Leicaにもうどっぷりのめり込んでしまったという自分自身の姿であった.




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です